ひきちガーデンサービスの日記

オーガニック植木屋の日常や雑感

ルビーロウムシ

今日の仕事はソヨゴについたルビーロウムシの掻き落とし。そろそろカイガラムシも春を迎えて活発に繁殖する時期なのだ。

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掻き落としに使うのは、焼き鳥の竹串。尖った方で細かいところのものを落とし、平べったい頭の部分で枝いっぱい広がったものを掻き落とす。中にはカイガラムシの上にカイガラムシが重なって、キサンタンガムみたいになってるところもあるから、この竹串が役に立つのだ。

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よく、「タイルが真っ黒に汚れて、ふと上を見たら、葉っぱに煤が降り注いだようになっていて、ビックリした」という話を聞く。そう、まさにそれがすす病だ。すす病はカイガラムシやアブラムシが出す排泄物(甘露)にカビが付いて発生する。そのままにしておくと、光合成ができなくて、木が確実に弱っていく。軍手をした手ですすを振り落としたり、酢を水で薄めて雑巾を浸し、よく絞って葉を拭ってやると、木は元気を取り戻していく。それと共に、すす病の根本原因であるカイガラムシやアブラムシを無農薬で退治しておくことが大切だ。

f:id:hikichigarden:20240410171834j:image竹串でこそげ落とす

常緑樹には「陰樹」と言って、半日陰や日陰を好む種類も多い。この庭はあまりにも日当たりがよいので、ソヨゴにとっては土が渇きすぎなのかもしれない。そうして弱ったソヨゴに、どこからかやってきたルビーロウが居着いてしまったのではないだろうか。その環境に合った植物であれば、そうそう虫にもやられない。虫や病気だって、力のない弱ったものを狙ってくるのだ。

このにっくきルビーロウムシに天敵はいないのか⁈と調べたところ、ルビーアカヤドリコバチという寄生蜂がいるという。ハチは農薬に弱い。だからこそ、無農薬での庭管理が鍵になる。

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f:id:hikichigarden:20240410223954j:image拙著『虫といっしょに庭づくり』

さて、木にしっかりとくっついているルビーロウムシだが、翅もないのにどこからやってくるのだろう?その答えは「風」に聞け!なんとこのルビーロウムシをはじめ5種類のカイガラムシの孵化幼虫が風に乗って移動することがわかっている。

しかもルビーロウムシは単為生殖なので雄さえ必要ない。メスだけでクローンを増やしていく。

f:id:hikichigarden:20240410223729j:image付箋だらけの伊澤宏毅著『カイガラムシAmazon公式→https://amzn.to/440JkOE

さて、ルビーロウムシを掻き落としたあとは、お手製のオーガニック・スプレー(自然農薬)を散布する。ニンニクごま油剤をたっぷり撒いて、カイガラムシが呼吸できないようにしてしまうのだ。これを2週間おきぐらいに繰り返す。

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オーガニック・スプレー(自然農薬)の作り方は、拙著『オーガニック植木屋の剪定術』に詳しく出ています。

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お花見

若い頃は、なんでみんながサクラの頃になるとそわそわするのか、理解できなかった。しかし、歳を重ねて今、この気持ちが少しわかるようになってきた。

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サクラの花の時期は短い。満開から散りはじめるまでは1週間ぐらいだろうか?そして、人生も後半に差しかかると、自分はあと何回ぐらいサクラを見ることができるのだろうか?と思わずにはいられない。
そんなわけで、花曇りの今日、家族でお花見に行ってきた。と言っても、車で15分もかからないごくごく近場である。

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そして、遊ぶとなると張り切るのが私たち。花見弁当にも力が入る。だし巻き卵、野菜サラダ、炊き込みご飯のおにぎり。 

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以前、料理研究家枝元なほみさんのエッセイで、「和晒しもめん」を水に浸してよく絞り、それに包んでおにぎりを握ると、手のひらが熱くならないし、そのまま包めばラップもいらないとあり、さっそく試してみた。和晒しもめんはミシン目があり、使いやすいが、さらに適当な大きさに切って使用。なるほど、これなら塩も要らず、塩分制限の人にもオススメだ。

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平日の飯能市名栗地区は、人混みの苦手な私たちにはうってつけで、サクラも独り占め。そんな名栗地域だが、どんどん新しいカフェ、ドーナツ屋、ジェラート屋、ケーキ屋もでき、土日にはちょっとした賑わいの観光地と化している。私たちが越してきた25年前にはキャンプ場ぐらいしかなかったから驚きだ。これを喜んでいいものやら、私たちにはまだわからない。
サクラにはカビの一種が原因で発生する伝染病「テングス病」が広がっており、ウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス)のようにならないか心配だが、私たちが元気なうちはサクラにももうちょっと頑張ってもらいたい。

f:id:hikichigarden:20240408162226j:imageレンタルの電動自転車もスタンバイ

 

 

ヤドリギと鳥

f:id:hikichigarden:20240408091805j:image東京都日野市で庭仕事をしていて、ふと遠くに目をやると、ケヤキが見えた。まだ葉っぱを出していないケヤキには、何やら丸いものがふたつついている。どうやらヤドリギらしい。ヤドリギは常緑の寄生植物で、海外では「永遠」を象徴する縁起のいいもの。神奈川県・JR大磯駅のホームからは、ヤドリギがたくさん付いているケヤキが見られるという。

f:id:hikichigarden:20240409190811j:image大磯駅から見えるケヤキヤドリギ(写真提供:住谷美知江さん)

なんでこんな高いところに寄生するの?と思うのだが、鳥がヤドリギのタネを食べてからフンをすると、その落とし所によっては運良くヤドリギになるという。
ヤドリギを食べる鳥」で検索すると、写真はレンジャクのものばかり。ヤドリギって、レンジャクによってしか種子散布されないの?タネが甘くて美味しいのなら、あの食いしん坊のヒヨドリだって食べるのでは?と思い、「鳥や自然あそびの案内人」で、『野鳥のレストラン』(少年写真新聞社・共著)の著者でもある森下英美子さんに聞いてみた。

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すると、やっぱりヒヨドリも食べるとのこと。森下さんによると、「ヤドリギの実で甘いのは外側の黄色い部分だけ。ヤドリギの実は二重構造になっていて、甘い果肉が入っている外果皮の内側にネバネバの入った内果皮があるんです。鳥は丸呑みするので、甘い実を食べたつもりでネバネバも一緒に食べちゃいます。そして、便秘にならないように水をたくさん飲んで糞をすると、おしりから糸のように垂れ下がった長い糞になるわけです」とのこと。
そのながーい糞がぶらーんぶらーんと風でゆらゆら揺れて、下の木の枝にひっかかると、そこで芽を出すというヤドリギ生存戦略なのだ。なんとよくできた種子散布物語なのだろう!

f:id:hikichigarden:20240408092621j:image(写真はヒヨドリ


このネバネバの実を、なぜ鳥の中でもレンジャク類やヒヨドリが、特に好むのだろう?
「しいて言うなら、ネバネバ糞を出すことを我慢できるくらい、甘いものに目がない鳥だからってことではないでしょうか?」(森下)。要するにこの実を食べるのは、変な糞を出してでも食べたいという食いしん坊な鳥だけ⁈
日本のレンジャク科の鳥には、ヒレンジャクキレンジャクがいる。「ヤドリギを食べる鳥」で検索すると、写真がレンジャク類のものばかりだったのは、まるで戦隊モノの「緋レンジャー」「黄レンジャー」みたいな派手な出立ちで、食べている姿が映えるからなのかもしれない。(以下の写真は、香川淳さんによるヒレンジャクの写真3枚)

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その後、森下英美子さんから連絡があり、叶内拓哉さんの「野鳥と木の実ハンドブック」で、ムクドリも食べると書いてあったそうだ。レンジャク、ヒヨドリムクドリは食いしん坊な鳥たちだって覚えておこう。

ケヤキの葉が茂ってしまうと、ヤドリギは発見しにくくなるので、今年はそろそろ見納めかな。

 

シジュウカラの巣箱

シジュウカラがしょっちゅう巣箱を見に来るのに、今年は巣作りしないからおかしいと思い、巣箱を外して中を見たら、掃除を忘れていた。

シジュウカラは、夫婦で巣作りすることで産卵・子育ての気合いが入るらしいので、ラクだろうからと前の巣を残しておかない方がいいらしい。

かと言って、前の巣を残しておくと、ぜったいに巣を作らないかというとそうでもない。状態のいい巣を残したままにしておいたことがあるが、それでもハイゴケを加えて営巣したことがある。だが、時期がとても遅くて、仕方なしに…という雰囲気ではあった。(あくまでも私見だが)。

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さて、前の巣を取り出したら、カメムシ2匹がコケの中で越冬。使い終わった巣も、何かの役には立っているのだ。

そして、1羽の雛が白骨化していた。足かなんかを悪くして、巣立つことができなかったのだろうか?初めて丸ごと1羽の骨を見た。合掌。

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水できれいに洗って乾かしてから巣箱を掛け替えたら、今朝、シジュウカラが一羽、中に入ってコツコツと叩いてから巣箱の強度を確認。さっそくたくさんのハイゴケを嘴に咥えて巣作りを始めた。だが、ヤマガラも諦めずに、横取りを狙っている。以前、巣箱をめぐって、シジュウカラヤマガラが熾烈な空中戦を展開したのを目撃したことがある。自然界の闘いは厳しい。

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タカコナカムラさんの料理教室『ホールフードスクール』

今日は午後1時から料理教室で講演会。なぜ、料理教室で庭の話?とも思われるだろうが、洗足池駅近くにあるタカコナカムラ・ホールフードスクールは、よくある料理教室とは一味も二味も違う。料理の作り方だけでなく、素材の選び方から、本物の素材を真面目に作っている食品業者の方たちを押し上げていこうとする熱意もすごい! 

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そして、生徒さんたちには、食べ物のことだけでなく、生活丸ごと安心安全な暮らしを教えるお教室。著書も多く、野菜くずから作るベジブロスや50度洗いは私も実践している。

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楽しみは、ここでいただくお昼食。正午頃までにおいでと言われ、生徒さんたちがこの日実習で作った料理をご馳走になれる。

本日のメニューは、しみ豆腐のカツレツ、うどんのグラタン、豆味噌のラタトゥイユ。パンにはひじきと豆味噌のペーストを塗って。食後は甘酒のタルト。目からウロコの料理の数々。優しいお味にホッとする。

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ラタトゥイユの盛り付けはタカコ先生が「中高(なかだか)にしないとダメよ」とNGを出されていた。鉢物は中央を高く見せるように盛り付けると美味しく見えるそうだ。

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「平たいお皿のときは?」と生徒でもないのに思わず質問したら、やはり平たい皿でもカツレツを重ねるようにするという。だから、私のところの盛り付けは、カツを重ねたところまではいいけど、手前で重なっているからあまりよろしくない。皿の中央付近で重なるようにして高さを出すそうだ。なるほど〜!


タカコ先生の「できたらそれで終わりじゃないの。どうせ口の中に入ったら同じ、じゃないの。美味しく見せるには盛り付けが大事。盛り付けまでしっかりやりましょうね」という言葉に、心の中で「はい!」と返事した私であった。

タカコさんの料理教室は本当に面白い!こんな料理教室は日本広しといえども、他にはない!

タカコナカムラ・ホールフードスクールのウェブサイト↓↓↓

https://www.wholefoodschool.com/

 

鳥を呼ぶ庭

いよいよ鳥たちの餌が少なくなってきた。虫はとっくにいないし、ナンテンやセンリョウ、マンリョウの実もだいぶ食べられている。そこへもってきて、この大雪だ。

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餌台にポンカンを横割にして刺しておけば、いろいろな鳥が来るかな?と、楽しみにしていたら、ヒヨドリが独占状態。

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なんと、雪がこんこん降っている中で、必死にポンカンを啄ばむヒヨドリがいて、残った実ものも大雪で隠れてしまうだろうから、必死なんだなぁ。

調べてみると、横割りにした柑橘類を枝先に下向きにしてぶら下げると、ホバリングしながら近寄れるのはメジロだけとあり、さっそく試してみることに。屋根もつけてみたけど、ホントにメジロだけが来るんだろうか?明日から観察、観察♪

ただし、餌やりは餌になるものがなくなる冬の間だけ。少しずつ餌を減らしていって、4月中旬までには終了したい。

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ちなみに余っていて掛けどころのないシジュウカラの巣箱は、ティッシュペーパー入れとして活用している。もちろん、いざとなればホンモノの巣箱として使えるのだが。

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鳥たちにたくさんきてもらえる庭になれば、虫による食害も減るので、オーガニック・ガーデンにとって、鳥を呼べる庭にすることは大切なことだ。

 

香害(こうがい)

時々、お客さんの庭で仕事をしていて、気分が悪くなることがある。隣の家の洗濯物の匂いだ。頭痛と気分の悪さが私たちを襲う。
先日、zoomで香害に関する日本消費者連盟の田中輝子さんによる講演会を聞いた。
いくつか印象に残っていることをあげたいと思う。
まず、香料やその他の化学物質を使った合成洗剤は、洗濯機を傷めるということ。マイクロカプセル化したことで、香料が長く残るようになったこと。一度環境に流出した場合は、回収不能であるということ。
また、「移香」といって、マイクロカプセルの香りが移るとなかなか取れず、そのため、化学物質過敏症の人は電車の座席に座れず、アルミシートを敷いて座っている人もいるという。「移香」によって図書館で借りた本に香りがキツく残っていてめくれなかったり、いろいろな人が触って自分のところにやってくるお札までが臭くて、買い物ができない人もいる。
だが、マイクロカプセルの洗剤を使っている人は「嗅覚疲労」によって、鼻が麻痺していてにおいがキツイことに全く気づかなくて、より強い香りを求めてしまう。

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そんなzoom講座を聞いたその日の午後、宅配業者の下請けドライバーの若い女性が、荷物を持ってきたのだが、香りがキツくて段ボールにまで「移香」して開けられない。うちには風除室といって、玄関と外の間に、靴のまま入るガラス張りの部屋がある。その風除室中ににおいが充満し、窓を全開してしばらくしないと、風除室に出られないほど。
翌日もまた彼女が配達にやってきたので、思い切ってにおいがキツイことを言ってみた。マイクロカプセルやジェルボールなどの洗剤を使っているか聞いたところ、なぜわかるの?という顔をされた。その匂いで気分が悪くなり、頭痛がすること、ダンボールにまでにおいがついてしまい、近寄れなくてすぐには開けられないこと、化学物質過敏症の人はきつい香りに弱いことなどを伝えたのだが、初めて言われたのかキョトンとした顔をしていた。わかってもらえたらいいのだが…。
さて、対処法も講師の田中輝子さんが教えてくれた。粘着ローラーを衣服に転がしてマイクロカプセルのかけらを取り、しばらくベランダで干して揮発させてから洗濯するといいらしい。
自分にとってはいいにおいだと思っても、それで体調が悪くなる人もいるということを、1人でも多くの人に知って欲しい。
もちろん庭の農薬も、化学物質過敏症を引き起こすことは、言うまでもない。