ひきちガーデンサービスの日記

オーガニック植木屋の日常や雑感

ヤドリギと鳥

f:id:hikichigarden:20240408091805j:image東京都日野市で庭仕事をしていて、ふと遠くに目をやると、ケヤキが見えた。まだ葉っぱを出していないケヤキには、何やら丸いものがふたつついている。どうやらヤドリギらしい。ヤドリギは常緑の寄生植物で、海外では「永遠」を象徴する縁起のいいもの。神奈川県・JR大磯駅のホームからは、ヤドリギがたくさん付いているケヤキが見られるという。

f:id:hikichigarden:20240409190811j:image大磯駅から見えるケヤキヤドリギ(写真提供:住谷美知江さん)

なんでこんな高いところに寄生するの?と思うのだが、鳥がヤドリギのタネを食べてからフンをすると、その落とし所によっては運良くヤドリギになるという。
ヤドリギを食べる鳥」で検索すると、写真はレンジャクのものばかり。ヤドリギって、レンジャクによってしか種子散布されないの?タネが甘くて美味しいのなら、あの食いしん坊のヒヨドリだって食べるのでは?と思い、「鳥や自然あそびの案内人」で、『野鳥のレストラン』(少年写真新聞社・共著)の著者でもある森下英美子さんに聞いてみた。

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すると、やっぱりヒヨドリも食べるとのこと。森下さんによると、「ヤドリギの実で甘いのは外側の黄色い部分だけ。ヤドリギの実は二重構造になっていて、甘い果肉が入っている外果皮の内側にネバネバの入った内果皮があるんです。鳥は丸呑みするので、甘い実を食べたつもりでネバネバも一緒に食べちゃいます。そして、便秘にならないように水をたくさん飲んで糞をすると、おしりから糸のように垂れ下がった長い糞になるわけです」とのこと。
そのながーい糞がぶらーんぶらーんと風でゆらゆら揺れて、下の木の枝にひっかかると、そこで芽を出すというヤドリギ生存戦略なのだ。なんとよくできた種子散布物語なのだろう!

f:id:hikichigarden:20240408092621j:image(写真はヒヨドリ


このネバネバの実を、なぜ鳥の中でもレンジャク類やヒヨドリが、特に好むのだろう?
「しいて言うなら、ネバネバ糞を出すことを我慢できるくらい、甘いものに目がない鳥だからってことではないでしょうか?」(森下)。要するにこの実を食べるのは、変な糞を出してでも食べたいという食いしん坊な鳥だけ⁈
日本のレンジャク科の鳥には、ヒレンジャクキレンジャクがいる。「ヤドリギを食べる鳥」で検索すると、写真がレンジャク類のものばかりだったのは、まるで戦隊モノの「緋レンジャー」「黄レンジャー」みたいな派手な出立ちで、食べている姿が映えるからなのかもしれない。(以下の写真は、香川淳さんによるヒレンジャクの写真3枚)

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その後、森下英美子さんから連絡があり、叶内拓哉さんの「野鳥と木の実ハンドブック」で、ムクドリも食べると書いてあったそうだ。レンジャク、ヒヨドリムクドリは食いしん坊な鳥たちだって覚えておこう。

ケヤキの葉が茂ってしまうと、ヤドリギは発見しにくくなるので、今年はそろそろ見納めかな。