ひきちガーデンサービスの日記

オーガニック植木屋の日常や雑感

イヌビワとイヌビワコバチ

植物も地域性があると言うか、初めて見た!と思っていたら、ある地域では、そんなもの腐るほどあるわい!というものも結構ある。

長い間の植木屋人生で、初めて見たこの植物は「ホソバイヌビワ」。さすが、元植物関係の教師をされていたお施主さんだけのことはある。かなりのご高齢で、時々記憶がおぼつかないこともあるのだが、植物の名前だけは、どんなに聞いてもしっかりと答えてくださる。

f:id:hikichigarden:20240513184100j:imageホソバイヌビワ

最初は成っている実がイチジクに似ているが、やけに実が小さいし、葉はイチジクと全然違うし、なんだろうと思っていた。それもそのはず、イチジクと同じ無花果(むかか)であり、実の中に花があるイメージ。 無花果は実ではなくて正確には花嚢(かのう)といい、中に花がびっしり詰まっている。

f:id:hikichigarden:20240513185343j:imageこちらは普通の「イヌビワ」

山口県広島県静岡県など、西が出身の友人たちは近くにたくさんあったと証言してくれた。

そして、多くのイヌビワ通の友人たちが口を揃えて言うのは「イヌビワコバチに気をつけて!」。どうやら、花嚢を割って食べようとすると、かなりの確率で中にイヌビワコバチが入っているらしい。

イヌビワコバチのオスには翅がなく、交尾したら一生を終えるだけ。メスは花嚢の中の花粉を身体中にまとい、他のイヌビワの木の花嚢を目指すのだ。卵を産むために。それにより、イヌビワ自身も受粉ができる。なんという関係性なのだろう、イヌビワとイヌビワコバチは!お互いの存在がなければ、お互いが生き延びられない。絶対共生のあいだがらなのだ。こんな時、自然界の不思議に、ただひれ伏すばかり。

 

バラ

今日の現場は中野区の個人病院。バラを這わせたいとのご希望で、8〜9年前に誘引用のフレームを作ったのだが、それが数年で見事に成長。あたりに良い香りを漂わせ、ここに来ただけで癒されそう。

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このバラの名前はわからない。肥料もやってないし、もちろんオーガニック。私たちは剪定をし、誘引をするだけ。日当たりもそんなには良くない。それでも、病虫害にも合わず、美しく咲いている。その土地に合っていれば、オーガニックでも大丈夫ということの証だ。

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飛び出たところを少しだけ剪定したので、その花の部分を持ち帰った。

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花びらを一枚ずつはがし、ザルに乗せて5〜10日ほど室内の窓辺で干して、ポプリにしてみようかと思う。ああ、家の中もいい香り!

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『二人キリ』

今日5月18日は、「阿部定事件」が起こってから、ちょうど88年。阿部定と言えば、今の若い人なら俳優の阿部サダヲのことしか思い浮かばないかもしれない。それもそのはず「阿部定事件」が起きたのは1936年(昭和11年)5月18日、まだ戦前の出来事であった。もう遠い昔のことだ。

阿部定事件」とは、料亭「吉田屋」の旦那・石田吉藏と仲居のお加代こと阿部定が、待合で密会の末、阿部定が吉藏の首を腰紐で締めて殺し、男の一物を切り取って持ち去った事件。

この度、「阿部定と彼女に関わりのあった人たちの証言」という形をとった評伝小説が出版された。村山由佳の『二人キリ』だ。タイトルがなんともいい。『キリ』がカタカナなのも効いている。

f:id:hikichigarden:20240424063227j:imageAmazonhttps://amzn.to/4dcRDLw

いろいろな人たちの証言とお定さん自身の語りがあり、双方の間に起きたことはひとつでも、言い分はこうも違うのかと思わされる。ある意味、有吉佐和子の『悪女について』と似ている。いろいろな人の証言から、少女時代からあの事件が起きるまで、さらに晩年までの阿部定が浮き彫りになってくる。話し言葉で書く文体はグルーヴ感に富んでいて、グイグイ読ませる。
小説とは言え、村山由佳は調べに調べたのだろうから、起きた出来事をかなり忠実に書いているのだろう。それを小説として肉付けし、昇華させた作家・村山由佳阿部定に対する想いが見て取れる。この小説は、私の阿部定像をガラリと変えてくれた。それまでは「淫乱狂気の色情殺人鬼」だと思っていたが、この小説を読んでいると、なんとも一途で可愛い人だったのでは?と思わずにはいられない。そして、吉藏とお定の濃密な関係に、読み終わってから大きなため息をふう〜…と、ひとつついた。

お定さんが人ひとりを殺して、5年で刑務所を出ていたことにも驚いた。このことは事実であり、模範囚だったらしい。インターネットで見た警察に捕まった時の実際の写真では、周りを取り囲む警察官もお定さんも笑っていて、和やかで驚いてしまう。どこか憎めない人だったからこそ、出所してからもいろいろな人が手を差し伸べて助けてくれたのだと思う。ファンも多かったらしく、舞踏家の土方巽などは、その後、お定さんがやっていた小さなおにぎり屋へ足しげく通ったとか。
波瀾万丈な人生で、多くの人が小説にしたり映画にもした。だが、これもインターネットで調べたのだが、晩年は世間から忽然と姿を消し、石田吉藏を弔う寺に送り主不明の花が、毎年命日には届いたそうだ。しかし、ある時から途絶えたのは、お定さんが80を超えた頃だったという。お定さんがいくつで、どこでどういうふうに亡くなったかは、いまだに誰も知らない。

カナメモチの病虫害

カナメモチの生垣を剪定していると、小さなカミキリムシが飛んできた。ルリカミキリと言って、体が黒に限りなく近い瑠璃色に輝いている。

f:id:hikichigarden:20240517215451j:imageルリカミキリの成虫

近年、ルリカミキリ幼虫のカナメモチ食害が目立つ。成虫は葉の葉脈に沿って食害するのだが、幼虫は枝や幹をまるでココヤシの繊維みたいにしてしまう。

f:id:hikichigarden:20240517215511j:image幼虫による食痕


カナメモチはごま色斑点病という病気も多い。

カナメモチを病虫害から守るには、殺菌剤や殺虫剤に頼らず、オーガニックで管理し、カナメモチ自体の樹勢を良くすることが大切。

また、近所にカナメモチの生垣が多く植栽されている場合、その中のどれかがごま色斑点病になると、菌糸が風で飛ばされて、近所にも広がっていく。生垣を新しく作る場合は、近所をよく見回って、樹種選びをしたいものだ。

f:id:hikichigarden:20240517215549j:imageごま色斑点病

 今度、菌を抑制する効果のある(あくまで抑制であり、「殺菌」ではない)コンポストティーかスギナ・ティーを噴霧してみようと思う。作り方は「オーガニック植木屋の剪定術」をご覧ください。
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クリーピングタイム

NPO法人日本オーガニック・ガーデン協会のコミュニティ・ガーデンがピンク色!クリーピングタイムが咲いたのだ。

f:id:hikichigarden:20240423135427j:imagef:id:hikichigarden:20240425115656j:image花壇の前まで張り出してきたタイムを掘り取る前と後

クリーピングタイムは、密集して育ち、背丈も高くならないため、日当たりの良い乾いたところでは、雑草抑制のために植えると効果大!

丸い花も可愛く、葉を料理やお茶に使うこともできる。

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しかしそこは植物、100%いいことずくめとはいかない。なぜなら、雑草すら抑制するほどの繁殖力があるということは、クリーピングタイムそのものが雑草化してしまうということでもあるからだ。現に、コミュニティ・ガーデンでも、生えてほしいスパイラル花壇を超えて、別のところにまで生えてきてしまっている。あわてて掘り取り、ほしい人にあげたりしている(買うと、それなりの値段はする)。

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ガーデンをうまく保つコツは、移植ゴテとハサミを持って、毎日庭をひと巡りすること。気がついた時に、剪定を少しでもしておくとあとが困らないし、はみ出た植物は掘り取っておけば、世話はない。それが無理なら、手ぶらで歩くだけでもいい。今、何がどうなっているか、現状を把握しておくことは、とても大切なことだからである。

モッコウバラの剪定

バラのシーズンがやってきた!あちこちの庭先で、いろいろな色や種類のバラが咲いている。

我が家でも鉢植えのコクテイルが咲き始めている。これは、近くのホームセンターで売れ残り、しおれかけていて、もう捨てられる寸前だったのを譲り受けてレスキューしてから10年以上になる。

f:id:hikichigarden:20240510103441j:imageコクテイル

こちらは咲き誇っていた頃のモッコウバラ

f:id:hikichigarden:20240510103918j:imageモッコウバラ

バラと言っても、モッコウバラは一足早く咲き、関東ではもう咲き終わっているところが多いことだろう。モッコウバラの場合は、花が咲き終わった今が強剪定のチャンス。思い切った剪定をして、その後はシュート(ギューンとキツく伸びた枝)を枝分かれしたところまで辿って切る。モッコウバラは棘がないので扱いやすい。だが、茂り方は旺盛なので、気を抜くとボサボサになるので注意が必要。

f:id:hikichigarden:20240510103535j:imageモッコウバラ剪定前
f:id:hikichigarden:20240510103532j:imageモッコウバラ剪定後

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f:id:hikichigarden:20240510103622j:imageパーゴラの内側も強剪定

こんなに強剪定しても、すぐに伸びるので、いい枝を誘引しておけば大丈夫。

モッコウバラは、バラの中でも特殊なので、今が剪定時期だが、他の棘ありのバラの強剪定は、一番底冷えのする寒い頃。その話は、またその時に!

 

中島みゆきコンサート『歌会Vol.1』

中島みゆきさんのコンサート『歌会Vol.1』に行ってきた。一度でいい、生の中島みゆきを聴きたい!という願いが、ようやく叶った。彼女のコンサートは、コロナ以来、実に4年ぶりだという。

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中島みゆきさんのことは、若い頃にかなり好きで、デビューしてから最初の8枚ぐらいのアルバムは全て聴き込んだが、最近はヒットしたものしかわからないので少々不安だったが、心配は杞憂に終わった。歌い上げた全19曲のうち5曲しか知らなかったけれど、じゅうぶん楽しめた。

f:id:hikichigarden:20240509083240j:imageセットリスト

若い頃のシャープな雰囲気のみゆきさんとはだいぶ異なり、みゆきさんも歳を取った。私だって歳を取ったのだから、当たり前のことだ。メガネをかけて、もうピンヒールも履いてはいなかった。だが、相変わらず透き通るような白さで美しく、72歳だというのに、こんなに声が出るものなのか⁈と驚かされた。言うまでもなく、バックを支えるバンド、ストリングス、コーラスの方たちも超一流。職人とも言えるお仕事をされていた。
そして、中島みゆきさん。彼女はミューズであり、御宣託を行う巫女であり、人々を苦しみから救う菩薩である。どれだけの人がこの人の歌に救われたのかと思うと、歌を通した菩薩行を行なっているとしか思えない。
観客の年齢層は高く、多くが60代以上に見えた。その誰もがとても慎ましやかで真面目そうで、きっといろいろなことがあったろうに、中島みゆきの歌に慰められ、励まされてここまで生きてきたんだろうなと思うと、観客の一人ひとりまでもが愛おしい。
そう、みゆきさんの歌には、いつも「私」がいる。まるで私に向かって歌いかけてくれてるように感じるのだ。
MCは相変わらずお茶目でかわいい話し方なのに、歌うと野太いビブラートでギャップが激しい。それもまた魅力。歌い出すと何かが憑依するようにも感じる。指先までの所作も美しい。

f:id:hikichigarden:20240509083312j:image会場で買ったキーホルダー

もう声を張り上げて歌うのもだんだんしんどくなることだろう。そう思うと、自分自身の老いや衰えにも考えが及び、人の世の儚さを思い知らされる。

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現代の菩薩、中島みゆきをぜひ生で聴いてほしい。なお、ドームやアリーナなどの大きなところではやらず、音の良い数千人規模のところでのコンサートになるので、なかなか抽選に当たりにくいことは、ご承知おきを。