ひきちガーデンサービスの日記

オーガニック植木屋の日常や雑感

アッパッパ

私の母は4年前に96歳で亡くなったから、100年前に生まれたことになる。100年と言えば1世紀だ。

こう暑いと思い出すのだが、子どものころ、夏になると、母お手製の「ムームー」という袖のない寸胴のワンピースを着せられたものだ。今では信じられないかもしれないが、私の子どもの頃、既製品の洋服を買うのは高くて、簡単なものなら、手作りの方が安上がりだったのだ。 

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私には同居の祖母もいて、その祖母が「あー、暑い!こういう日はアッパッパーだよ」などと言っていた。アッパッパーとは、夏の季語「サマードレス」の傍題で、正式には「アッパッパ」という。だが、アッパッパと言って、わかる人はどれぐらいいるのだろう。もはや「死語」と言ってもいいかもしれない。 

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私たちは夫婦して趣味が俳句で、句会にも月に2回通っているが、季語を集めた「歳時記」というのが実に面白い。無人島に持っていくなら、私は『大歳時記』を持っていくだろう。動植物や天文などはもちろんのこと、このようにアッパッパや白シャツ、白靴なども夏の季語。だから、都会に行って電車に乗っても、ついつい乗客たちの服装などを観察して、俳句にしてしまう。例えば、こんな具合に。

●白シャツの増えて中央線特快

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たくさんある季語だが、もはやほとんど使われなくなっているものも多い。まさにアッパッパもそうなのだが、冬の男性のコートでマント付き、和装にも着られた「インバネス」などもその類であろう。別名「とんび」ともいう。

今や有名な俳人の夏井いつきさんが『絶滅寸前季語辞典』『絶滅危急季語辞典』を書いていて、これがすこぶる面白い。へそ曲がりな私は、ここに掲載されているような季語を用いて、つい一句詠みたくなってしまう。が、そういう句は、「よくこんな季語で作った!」と絶賛されるか、「意味がわからない」と切って捨てられるかのどちらかだ。いつか、アッパッパを使って一句作りたいと、虎視眈々と狙っている。

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