雨の中、アジサイが美しい。私が子どもの頃と違い、たくさんの種類が園芸店でも売られている。
4枚の花びらのように見えるものは、じつは萼で、花は中央の粒のようなもののほうだ。だから、俳句では「紫陽花」の傍題として、「四葩(よひら)」というものがある。
土が酸性だと青、アルカリ性では赤紫だと言われてきたが、最近ではどんな土質でもピンクだったり青であるものも多い。また、同じ庭に同じ種類を並べても青と赤紫が咲いたり、どうやらそんなに単純ではないらしい。
一時期、カシワバアジサイが流行ったが、小さく維持するのが難しく、だからといって切り詰めると花が咲かなくなり、なかなか気位の難しい樹種だ。雨が降ると、三角の重い頭を全て垂れてしまい、庭が乱れた感じになってしまう。
アジサイの剪定だが、脚立も必要ないし刈り込み鋏もいらないので、簡単だと思っている人も多いことだろう。そのため、自分で切っては「毎年まったく咲かない」と悩んでいる人も少なくない。だが、アジサイは剪定が難しい樹種のベストスリーに入るかもしれない。花からニ芽下のところを剪定するのが常套だが、こうしたからといって必ずしも翌年咲くかどうかはわからない。花芽ではなく、新芽になってしまうこともあるからだ。だからといって考えもなくバチバチ切れば、ほぼ花は咲かないのだから、本当に悩ましい。また、毎年ニ芽下で切っていると、確実に株が大きくなってしまう。それで、3〜4年に一度、思い切って短く切り戻し、花を諦めるという潔さも必要になってくる。
なお、アジサイをたくさん植えていたお客さんで、蚊に悩まされていた人がいた。そこで、アジサイをところどころ間引きしたところ、風通しが良くなり、蚊の発生が随分と減ったそうだ。
始末がいいのがアナベルという小ぶりの白い花を咲かせるもので、3月末までに剪定すれば、どこで切っても花が咲く。花瓶に生けても、さまになる。咲き終わって枯れたものは、ドライフラワーとして飾ってもシックな感じになる。
また、ヤマアジサイもコンパクトに抑えられるので、広くない庭でも楽しめる。
さて、そのアジサイ、日本ではあまりにも見慣れているので、どこにでもあると思っていたが、タイ在住の友人に聞いたところ、タイでは暑過ぎて生育が難しく、まだまだ珍しい花だそうだ。更衣(ころもがえ)が面倒くさいと思っていたが、四季のある国だからこそ、楽しめる樹種や草花も多いのだということを、気づかされた。